今回は第10話「ひと目会いたい」です。
以下の記述にはネタバレがあります。
前回の感想はこちら。
【第9話:引き裂かれる二人】
各回の感想記事のURLは
こちらの一覧(インデックス)記事でまとめています。
【テレビドラマ感想一覧:2010年春 放送開始作品】────
前回、伊豆の温泉宿の前で
鈴原奈緒(松雪泰子さん)が警察に逮捕された後のお話でした。
逮捕されてまで、
鈴原奈緒が鈴原継美ちゃん(道木怜南/芦田愛菜さん)の
食事の心配をした点でも、
女性が子供を誘拐して育てる内容が似ていた
NHKのドラマ「八日目の蝉」と同じでした。
【感想記事「八日目の蝉」第6回(最終回):奇跡】
私は、「八日目〜」での描写は
擬似母親としてのエゴが強く出たような感じがして
(主人公の女性が自分勝手だと、急に強く思えた)
あまり好きではなかったのですが
今回のこちらについては、
好きとか嫌いといった感情は特に出ず、普通に淡々と
「あぁ、鈴原奈緒も同じ心配するんだ?」と思いました。
主要登場人物のそれぞれがよく描かれているこちらのドラマ。
今回は特に、藤吉駿輔(山本耕史さん)の言動が
私には印象が残りました。
以前は、攻撃的な言動で鈴原奈緒の不安を煽ったり、
試す狙いもあったとはいえ、高額な金額を強請ったりもしましたが、
鈴原奈緒の真剣さを知ってからは一転して、
彼女の力になっていました。
思うように身動きが取れない鈴原奈緒や、鈴原家の人々の代わりに
児童養護施設に取材で入って
彼女の映像を無断で撮影してきたのもGJですが、
継美ちゃんを未だに「継美」と呼ぶ鈴原奈緒の一方で、
正しく「怜南ちゃん」と呼び、鈴原奈緒を諭した点が
良かったです。
鈴原奈緒は逮捕されて、書類送検され……
公判では、執行猶予がついたとはいえ、
有罪の判決を受けました。
これからの鈴原奈緒には、公的に行動が制限されます。
勿論、継美ちゃんに会うことは叶いません。
これからの二人を思えば、
鈴原奈緒は継美ちゃんへの未練や母性を断ち切る必要があり、
また、これは、周囲が支えがなければ、
なかなか難しいことです。
藤吉駿輔は、鈴原奈緒の前で敢えて「怜南ちゃん」と呼ぶことで、
鈴原奈緒に現状を示していたのではないでしょうか。
「もう二人の逃亡劇は終わった」、
「鈴原継美という人物はどこにも居らず、
鈴原奈緒は誰かの母ではない」という現実を
彼女に突きつけていたんだと思います。
以前の回において、鈴原奈緒が、
上京してきた道木仁美(尾野真千子さん)に対して
「子供をあなたに帰す」などと言ったことがありました。
今回の鈴原奈緒の様子だと、
たとえ、道木仁美に引き取られた継美ちゃんが
そのまま室蘭に戻ったとしても、
鈴原奈緒は、「継美は大丈夫かしら」
「また虐待を受けてないかしら」と不安になったでしょう。
なので、道木仁美や、彼女の恋人の浦上真人に逮捕状が出されて、
また、きちんとした施設で継美ちゃんが保護されたこの結末は、
彼女にとっても良かったのかもしれません。
ぶっちゃけ、継美ちゃんが保護されてなかったら、
道木仁美が逮捕される事はなかったでしょうし。
これは、ドラマに限らず、
漫画や小説、映画といった作品に共通する事ですが、
登場人物たちは(特に主人公は)
作中の様々な出来事を経て、人間的に成長していきます。
彼らを見守りながら一喜一憂するのは、
まさに視聴者/読者としての醍醐味ですが、
こちら“Mother”では、特に鈴原奈緒周辺において、
問題が改善されたエピソードが多々あります。
(逆に考えれば、以前の鈴原奈緒には、
それだけ多くの問題があった事になります)
一番の問題は、親子(母子)関係だったわけですが……
今回、鈴原奈緒に執行猶予がついた件を
鈴原藤子(高畑淳子さん)がいの一番に
うっかりさん(望月葉奈/田中裕子さん)に知らせようとしたものの、
彼女が入院した件を知って、慌てて駆け付けるシーンがありました。
かつては、鈴原藤子がうっかりさんを軽蔑していたからか、
用が無ければ会わない/うっかりさんの顔を見るだけで不愉快になる
……といった描写がありました。
また、うっかりさんはうっかりさんで
見ているこちらが苦々しく思ってしまうほど、
鈴原藤子に対して過剰に卑屈になっていました。
それだけ、うっかりさんは鈴原藤子に対して負い目があり、
鈴原藤子はうっかりさんに対して怒っていたのでしょうが、
今回、二人は、“奈緒という子がいる親”として
心を通わせていたと思います。
鈴原奈緒と鈴原藤子、そして、
鈴原奈緒とうっかりさんの仲直りのシーンも
大変良かったですが、
今回の、鈴原藤子とうっかりさんが心の繋がりを持つシーンも
それらに負けず劣らずで素晴らしかったです。
本当に良かった。
うっかりさんと言えば、彼女の過去が明かされました。
以前の感想記事で私も想像した通り、
やはり彼女は夫を殺していたんですね。
当時はもう
どうしようもないところまで追い詰められていたんだろうなぁ。
そんな、悲惨と言えるかもしれない人生を送ったうっかりさんが、
鈴原奈緒と継美ちゃんと一緒に観覧車に乗ったあの一日だけを
生きた歓びとして挙げて、大事にしているのは
とてもせつなかったです。
そして、今回の放送の最後。
今回は泣かずに済むかも……と思っていましたが、
涙ぐんだ継美ちゃんが、電話越しに
「お母さん、いつ迎えに来るの」と言った瞬間、
私の涙腺が崩壊しました。
今回も泣いてしまいました。
その前に、画面下を流れるスタッフクレジット
(テロップ)が早々に出たので
「こりゃ、最後に何か衝撃的なシーンが来るな」とは
分かっていたのですが
まさか継美ちゃんが「もう一回誘拐して」と言うとは!!
このシーン。
その前に、藤吉駿輔が秘かに撮ってきた映像が
良い伏線になっていたと思います。
あの映像の中で、
再び「道木怜南」という名前を与えられた継美ちゃんが
幸せそうに映っていればいるほど、
実は淋しくてたまらなかったんだと分かるこの電話の衝撃度が
強まりますので……。
人前では自分を「怜南(れな)」と呼び、
施設にいる他の子供たちと楽しく遊ぶ一方で、
実は、秘かに鈴原奈緒に何度も電話をしていたんですね。
(何十件もの“非通知”の着信の履歴が
鈴原奈緒の電話に残っていた)
また、電話をしている最中に、つい感極まったのと、
鈴原奈緒と対する時は「継美」である意識が強いのか、
この電話の最中の継美ちゃんは、
彼女自身を「れな」ではなく「つぐみ」と発していました。
いくら今が正しい状況下にあるとはいえ、
継美ちゃんにしてみれば、
大人の都合で。お母さん(鈴原奈緒)と
いきなり引き離されたようなものですものね。
これだけ、二人の間で
母子としての繋がりが強まってしまうと、
特に子供には、何が正しいかなど関係なくなるよなーと
改めて思いました。
こういう事態になったのに、継美ちゃんが、
実母でなく鈴原奈緒を慕っていると分かっただけでも、
継美ちゃんの中では“鈴原奈緒がお母さん”であるのが
よく伝わってきます。
さて、継美ちゃんに電話で懇願された事によって
鈴原奈緒にしてみれば、
事件が一回りして再び自分の元に戻ってきた事になりましたが……
彼女やその周りの人間がどうするのか、
次の最終回も見守りたいと思っています。
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続きの感想も書きました。
【第11話(最終回SP):ずっと愛してる】
宜しければ合わせてどうぞ。